同世代を振り返り、第二世代と第三世代の境界を探る

俺は82年の早生まれである。厳密な年代で語れば第三世代であるが、中学・高校時代を振り返ると周りには第二世代的なオタクが居た。むしろ当時オタク臭い雰囲気を匂わせていた連中は、第二世代色が強かった気がする。そして、圧倒的に理系志望が多かった。
この第二世代的な面々の特徴として、Windows95登場前後の時点で彼らは家庭で自分の使えるパソコンを持っていた事を、最近思い出した。もちろん全てが全てパソコンを持っていた訳でもないし、持っていた面々の全てがオタクだった訳ではないけれども。ただ、当時30万近くした道具を家に持ち子供に触らせていた家庭というのは、やっぱり金があったろう。そしてしっかり教育がなされているのか、比較的勉強の出来る奴が多かった。
こういう連中の中にはゲーム機も一通り揃っているような奴もやっぱり居た。PCエンジン系の機種とか、レアな例では3DORealなんかが自室にあった奴も。恐ろしい話である。やらせてもらえば良かったと今では後悔している。
エアガンなんかの話題が出ることもあった。車やバイクなんかの話題も、ガキにしては詳しい。それが今振り返ると第二世代的なオタクだったなあと感じる、中学時代の同級生達である。彼らは独特の雰囲気があって、周りからの受けは必ずしも良くはないのだが、多少偏屈だが自信を持っている奴が多く、TPOによっては頼られていた人材ではあった。
高校に入ってからもやっぱり話をよく交わしていたのは似たような連中だったのだけれど、高二で文系のクラスに入ると新たなタイプの話し相手が登場し始めた。そいつ等はそれまで全然オタク的な会話はせず、ただ下らないネタで毎日どうしょうもない雰囲気を醸し出していた集団だったのである。服の話や音楽の話なんてしていない、教師の口真似やTVのバラエティくらいしか話題のない、もちろん女子からは完全に相手にされていない、成績は我が三流進学校でも並くらい、そういう集まりである。ところがある日、そいつ等がネタのつもりで『ときメモ』をやり始める訳だ。そしてネタにはしながらも一通りやり終え、そのまま『サクラ大戦』に続けて流れ込んでいったのである。
今考えると、あれが第三世代誕生の瞬間だったのではないかと、そう思えて寒気がする。暇を持て余して「今、けっこう流行っているらしいし、ちょっとやってみるか」でころっとハマってしまった連中が、現状の出発点ではなかったろうか。彼らは当時エヴァも見ていなかったと思う。少なくとも、理系の第二世代的な連中とはエヴァの話を何度かした記憶があるし一緒に夏の劇場へ行った奴も居たが、彼らとは一言さえ話題にしなかった気がする。見たとしても彼らからどんな感想が出ただろう。
しかし彼らはあっさりとギャルゲーに対する抵抗を失った。もし彼らが進学後によりオタクな連中と付き合いだしていたとしたら、間違いなくエロゲーに手を出して確実に今頃『Air』や『Kanon』が人生の最高傑作だという、そんな人生を今頃送っているに違いない。
俺にとって前者の連中は、とっつきにくいけどその手の話となると尊敬出来る奴らだった。後者の連中は、なんだか俺が食わず嫌いでいる物に特攻していって小馬鹿にしているけど、その小馬鹿にする態度は鼻についたし、その割には入れ込んでいる様に違和感があった。多分あの違和感は「キモさ」だったんだろうなあと、今になって分かる。第二世代にとってはこだわりを持って熱中に値する趣味だったのだけれど、第三世代にとってみれば腰掛け的に楽しめる安易な趣味に変容していた。
嫌いな連中がやっぱり主流になったと思う。本心から思う。
 
なお、面白いことに高校時代の文系クラスで後ろの席に居た奴は、ラルクと月9とCLAMPねこぢるとサイコとアゴなしゲンを全て同レベルで語れるような、今考えると自分の勝手基準では「サブカル」予備軍に値する人物だった。で、隣りだかその一つ前だかの席の奴はビジュアル系バンドが好きで少女漫画的なモノを好む、「腐女子」か「メンヘル」に相応しい根暗な男子であった。そして俺の席の前2人がそれなりにイケてるサッカー部、あれは不思議な空間だった。大体サブカル予備軍は服や音楽の話でサッカー部の連中と話が出来るのに、俺に東京バビロン読ませたりしてるんだから。
そしてその当時俺は、ブギーポップ読んで、よく知りもしないゲームショーに行き、深夜でトライガンLainを見て、サイコも買うようになって、夏エヴァもののけ姫を見て、年度の終わりにキャラフェスへ行き帰りにパーフェクト・ブルーを見て、ある意味自分の人生で一番オタクらしい一年を過ごした後に受験生となった。なお、受験期間中にもリヴァイアスとアニメ版ブギーポップは見ていた。
そして、その後の俺はオタクにとってあり得ない大学生活を向かえ、そして想像だにしなかった社会の最底辺へと転げ落ちてゆく。ところでこれは私小説か?