筒井康隆『パプリカ』

パプリカ

パプリカ

あまりに面白かったので、ぐうの音も出ないです。なんて息のつく暇もない展開なんだろう。なんてイメージをかきたてられる物語なんだろう。
個人的には『BRAIN VALLEY』を読んだ時に似た感覚を受けながら読みました。あれよあれよと言う間に、物語が想像の追いつかないようなスケールに展開していくところとか。
寝ている間に見る『夢』の表現に、強いリアリティを感じました。しかもこのリアリティが後半に大きな効果を与えていくのが・・・。
対象の『夢』を覗き見ることが出来、干渉さえ可能とする機械がこの物語の主となる道具。無意識に見る『夢』から、その隠された意味を分析し、治療等に役立てている精神医学の研究者や患者が主な登場人物。それがこれほど面白い展開をもたらすとは・・・。
しかし、『夢』と『妄想』や『狂気』との境界線が曖昧になってくる辺りから、背筋が冷えてきますね。しかもそんな『夢』を共有している瞬間なんて、想像したこともない。さらには『夢』だからコントロールも出来る。
面白さは第一級のエンターテイメントであるのだけれど、アイディアの出発点が投げ掛けるものは、考えさせるものがありますね・・・。他人の『夢』に、深入りはすまい・・・。