コードウェイナー・スミス『鼠と竜のゲーム』

いったいなんなんだ人類補完機構
独創的な遠い未来の宇宙像に、理解が追いつかないところが多々あって、目覚めの悪い夢を山ほど見せられたような短編集でした。
しかもそれが補完機構を主軸とした仮想宇宙史を、各短編がいくつかのキーワード単位でリンクして描いているのだから、異様な壮大さに読んでいて恐れ入ります。しかもそれが妙に昔話風な語り口をしていて、漠然と不可思議さやウィットな気分を感じさせてくれるのが、みょうちくりん。
倫理感が軽くぶっ壊れている世界なのに、それを表面化させない法やルールや組織がまた居心地悪く、混沌としていて何が良くて何が悪いのか、少しも分かりません。
細かいところまで設定がある臭いもするが、大雑把過ぎる印象も受ける。説教くさいオチという気もするが、何も意味を持たないようにも感じる。
まさに混沌としててノックアウトです。良し悪しじゃないですね。もうこういうモンなんだと、ある意味開き直って楽しむ小説なのでしょう。