野尻抱介『太陽の簒奪者』

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

ううん、読み終わった後に稲葉振一郎の解説読んで、「ああそうだよな、それがテーマなんだしな。うんなるほど、「それって何だ?まるっきりちんぷんかんぷんだ」でOKだよね。あー、なんだー」と。ファーストコンタクト物の基本、「接触したけどまるで分からなかった」をすっかり忘れてた。
 
……うん?コレ、感想なの?
 
もう少し、ハードSFでない部分の細部を描いてくれたらなあ、とやっぱり思ってしまった。気がつくともう宇宙戦艦乗ってたり、UNSSの組織構造とか国連との確執とか地球の状況とかが結構かるーい表現で終わってるのが事態の異常さを盛り上げ損なってたり、「ちょっと展開が早いな、なんだか字面だけじゃよう掴めんな」と気になって、なんとも勿体無い。
なのにエピローグは、ちょっと蛇足かなあ、と。あれは、クラークに対するオマージュかと思ったりしたのは……、どうでもいいか。
ナノマシンで水星が変化していくあたりとか、個人的には大好きだったりする。
あとは、お膳立てした方は自分で作ったつもり、しかし視点が変わると実は偶然出来たもの、そんな人間とコミュニケート出来ない人工知能という存在に、ああ面白いなあ、そりゃそうだ、と。
読後に「知性とは何か?」を考える機会入門書、という感じの扱いなんだろうか。なんだか意外とツボにハマらなかった感じで、自分でもよく分からない。
 
多分、クラークみたいに「あー、色々手を打ってみたけど一切わかんねー」とか、レムみたいに「コイツはなんだ!?今の俺たちじゃちっとも手に負えないバケモノじゃねーか!」とか、あからさまに現人類の尺度じゃ測れん圧倒的な知性・非知性の登場を、暗に期待してたからかも。そう考えると、「なんだか生物としてそれほど奇異じゃないしコミュニケーションも取れたけれど、でも知性の根っこ部分が全く理解不能」という知的生命を描いてる点は、実はスゴイんじゃないかと今更思ったりしている。