小松左京・谷甲州『日本沈没 第二部』

日本沈没 第二部

日本沈没 第二部

日本沈没』の25年後を描き出す続編。国土を失った日本人のその後が焦点となり、各国へ散った日本人が抱える現地摩擦の問題や、散った日本人の薄れ始めた民族意識をどのように回復させるかなど、途上人物の物語から描きつつ、その問題解決の為に導入された隠し玉技術が運用のうちに別の意味を持ち始めるという、そしてそれらを集約していくのが政治の視点であり、まるで仮想歴史における政治小説みたいな内容に。なんとも説明が難しい。
これを読む前にちょうど小松左京の『SF魂』を読んでいて、その中で日本沈没に触れているところで、最も書きたかったのが国を失った日本人の姿を描く第二部だ、という事が書かれていた。だから妙な先入観が先走ってしまって、思ったよりも淡々としている、という印象が第一にあった。読む前に想像していたのは、パプアニューギニアの慰霊祭前後における篠原の日本人としての語りや、カザフスタンにおける小野田の存在などが、それに近かった。だからそこに登場した地球シミュレーターの存在は、もの凄い異物感があったという感じを受けた。それによってもたらされる展開は、第一部の『D計画』さながらでSF小説としての山場としてはかなり面白いものではあるのだが、どうも一番心待ちにしていた部分を飛び越えて次の段階へ入ってしまったようなあっけなさもある。もっと、平凡な日本人が四苦八苦する様を見せられると思っていたのだが、随分な勢いで「政治」に四苦八苦する有能な日本人たちになってしまっていたのが、なんとなく残念。
いや、SFとして出来る事は多数詰まっていて、また現在の世界をよく反映した国際情勢を描いているのだから、全く魅力がないという事は無く。ただ、これが「第二部」としてすんなり受け入れられるものかどうかの判断がつきかねない。多分、もう少し主役たちの動きに見せ場があったら、また印象も違ったのだろうと。限られた人物を除くと、自らの過ごした周辺の語り部で終わってしまった登場人物も少なくない。
第一部同様に、考えさせられるところは大いにある。ただ、それを物語が圧倒的な勢いで後押ししているか否かの点で、第一部のような強靭さが感じられないのが勿体無いと思うところ。