神林長平『戦闘妖精・雪風<改>』

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)

何も言う事が出来ないです。完璧です。
連想したのはスタニスワフ・レムの『砂漠の惑星』。正体不明のジャムに関する、断片的な情報からの印象をもったのが理由か。しかし、それ以上に作中で異質な存在感を増していくのが、雪風などのFAF保有する機械の数々。正体不明の敵と、理解を超えた機械の間で、自らの存在意義に疑問を持ち始める「非人間的」な兵士達という構図。人間が必死にその答えを探そうとしている間にも、どんどん遠くへ行ってしまう機械達。答えが見つからないまま、それでもひたすら疾走している感じ。
ドッグファイトのスピード感溢れる描写も、また読んでいてスリルがあって。各エピソードごとに、サブキャラクターまでよく活かしているのもミソ。ここらのエンターテイメントっぷりが一級品。
これは絶対、最初に読むSF小説にしちゃいけない作品だと思った。この作品基準にしたら、楽しめない作品が多数になっちゃう気がする。