『80年代SF傑作選』

80年代SF傑作選〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

80年代SF傑作選〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

80年代SF傑作選〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

80年代SF傑作選〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

すげーな80年代、と素直に思う「傑作選」に相応しい内容だった。
とりあえず気に入った作品を羅列。
 
わが愛しき娘たちよ(コニー・ウィリス)
マース・ホテルから生中継で(アレン・M.スティール)
シュレーディンガーの子猫(ジョージ・アレック・エフィンジャー)
祈り(ジョアンナ・ラス)
確率パイプライン(ルーディ・ラッカー マーク・レイドロー)
血をわけた子供(オクテイヴィア・バトラー)
ぼくがハリーズ・バーガー・ショップをやめたいきさつ(ローレンス・ワット・エヴァンズ)
鏖戦(グレッグ・ベア)
 
女性作家の作品に強烈な印象を感じるものが多かった。『わが愛しき〜』や『血をわけた〜』の衝撃的な設定も凄かったのだが、個人的に忘れられないのが『祈り』。「宗教」や「風習」に順じて生きる人々に対する強い批判のこめられた物語という印象を持った。
『マース・ホテルから〜』もいいトコ突いた作品。音楽と環境の結びつきをSFで上手く表現しているなあ、と。
ラッカーとレイドローの共作は、軽妙かつトンデモ展開なテンションが堪らない。ラッカーの作風は大好きです。
『僕がハリーズ・バーガーを〜』はとりあえず捻くれ者は是非一読を。
 
ゼラズニイはこの短編集で初めて読んだが、話の転がし方が上手い作家かな、という印象。SF的なアイディアをピンポイントで使い、脚色を豊かに読ませるというか。
ギブスンは、根っこは完全にハードボイルドなんだろうなと、これの作品にて思う。SFでこんだけ上手くハードボイルドやれるっていうのが重要なのかも知れない、とか考えた。
ブルース・スターリングは、オチが結構面白い作品だった。のだけれど、やっぱり文章がカタイ印象を受ける。でも、アイディアマンなんだよなあ。きっと。そう気がついた途端に『スキズマトリックス』は後からじわじわその面白さが分かってきた。必読なんだけど、満腹感は期待するなというか、創作料理の上手い店?
 
『ブラインド・シェミイ』がどんな作品だったか思い出せなかった。検索してやっと思い出した。そうそう、如何にも「接続もの」だなあという印象だったんだっけ。
 
しかし、全く以って一部はファンタジーとの境界線が見えないラインナップでもあるなあ。けれど、80年代の作品は、地に足着いたリアリズムが感じられる作品が多くて、SFの大前提に不慣れな人には読ませ易い印象も持った。でも、面白さまで伝わるかというと、難しいラインナップでもあるなあ。長編SFを何冊か読んだことのあるタイプに薦めるには、かなりお薦めな2冊だと思う。