内輪ノリ、どこが悪い。

いきなり、昔から思っていたのに最近すっかり忘れていたことを思い出した。
俺の母校の学園祭は学生主体で運営されていて、独特な理念やルールが多く企画も他大学と比較するとぱっとしないので、典型的なぼやきとして「内輪ノリだからつまんねえ」というのをよく聞かされた。結局、盛り上がってるのは実行委員を輩出してる学生団体に所属する公認サークルや、金が稼げて学内で酒が飲めればそれでいい体育会系・オールラウンド系サークルくらいなものだったから、指摘としては間違っていない。確かにサークルで参加している人間以外の客は、他の大学に比較して少ない。有名ミュージシャンやアイドルやタレントは呼ばず、目玉がサブカルが喜びそうなアーティストなんかだったりする傾向があるので、一般人にはとっつきにくい。
けれども、俺みたいな学園祭の実行委員の経験者は一つの事実を悟る。
 
学園祭は「内輪ノリ」で当たり前なのである。「内輪ノリ」が沢山集まって、より大きな「内輪ノリ」を作るのが学園祭なのである。
だから、自分から「内輪ノリ」に飛び込めない奴は、ハナから学園祭に期待などしてはいけないのだ。
 
確かに我が母校の学園祭は、ポップさも話題性にも欠ける。だが、その点を補強して来場する客というのは、その点のみに期待してきて学生のやってる活動にはなんも興味を持たない層である。一時的な客増と、屋台サークルの増収以外、彼らがもたらすものは少ない。
学園祭の真の主役は、やはり普段日の目を見ない文化系サークルの発表にある。自サークルの活動に籠もりがちな彼らが、サークル外の人間と接触し意見や感想を貰える数少ない機会なのである。だから多くの文化系サークルは、学園祭にサークルの全運営能力を投入する。内輪ノリを、外部に伝播させるチャンスである。
勿論、そう簡単には成功しない。準備段階に多くの失敗を重ね、当日になってみれば教室の中へ足を踏み入れる客より入口さえ見向きもしない客ばかりという現実に直面し、アンケートを取ってみても有用な回答は1割得られるかどうかという世界。あからさまに貶す客も来るし、出し物によっては冷やかしも来る。
だが、それでも文化系サークルは学祭に望むのだ。そして、数少ない好意的なふれあいと、困難を乗り越えた仲間内の結束をつまみに打ち上げを行い、自分たちの活動を再確認するのである。
 
運営の側に立ってみると、サークルというものが如何に自団体の事しか考えていないか、よく分かる。いや、自団体どころかサークルさえどうでもいいと思ってる輩さえ居る。酒に潰れる、調子に乗って怪我をする、他団体に喧嘩を吹っかける、お隣どころか上下の階まで響くような大音響で企画をやる、持ち込み禁止した危険物を使う。だが、そういうルールさえ守れば、学園祭実行委員会は彼らの活動になんの文句もつけない。そして彼らが相互に影響され、同じ大学内で行われているお互いの活動を知って、それぞれのサークル活動に新たな刺激が加わるのである。テニサーの慣れた客引きにバンド系が感心し、バンド系の勢いに任せたステージに学内イベント系がノリ、学内イベント系の暴走企画でテニサー連中が楽しむ。こうして内輪が徐々に拡大される。
 
確かに学生の活動なんてオナニーだ。人様に見せられたもんじゃない。なるほど、それは正しい意見だ。
けれど、初めから人様に見せられるような芸や特技を持っている奴なんてそうは居ないし、そんな奴はおとなしく学園祭なんぞに満足しないで学外に出て行ってしまうだろう。そもそも、そんな生温いサークル活動なんて関わらないかもしれないし、むしろ大学生にすらならないかも知れない。
学生だから許される活動がある。カネが取れるレベルかどうかなんて考えずに、やりたい事だけやりたいように出来る。でもやっぱり客は来て欲しいから試行錯誤をする。宣伝、企画内容、各人の活動成果比較。その過程で、全く成長しない奴などいない。
 
内輪ノリ・学生文化を馬鹿にするくせに何もしないで批判しているつもりの連中、そんなことより家でダラダラシコシコしている方が好きな連中は、じゃあソイツらを笑ったりナメたり出来るだけの実力・成長はあるんだろうか。
まさか寂しいから吠えてるって訳じゃないよね?
 
文化系ニートも、『げんしけん』に憧れてオタサー入ったヤツも、群れて何かやってみろってこと。それもなるべく人の目につくところで。批評家気取るなら、批評対象の目につく場所でちゃんと吠えて来い。好きなアニメやゲームがあるなら、一般人の目につくところで作品紹介してみろって。
大学ン中だったら全然許されるんだから。学園祭なら、誰が何やろうがルールを外れてなきゃ許されるんだから。
社会人になってからは時間が無い、社会人にならなければ金が無い。社会人になったら職場に仲間が居るとは限らない。社会人にならなかったら、新たな仲間なんてますます自分から動かなきゃ出来ない。
 
自分のやってること・好きなモンに価値があると思うなら、やるだけやってみな。許される環境にいるうちに。探しやすい環境にいるうちに。