スタニスワフ・レム『砂漠の惑星』

砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)

砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)

まさに「為す術無し」という状態で感じる清々しさ。「手も足も出ない」という事実で獲得される悟り。
テーマこそ同著者の『ソラリスの陽のもとに』と同様だが、あちらが理解不能な知的生命体だったのに対して、こちらは意志も知性も感じられないマイクロマシン群体。ただただ群生の昆虫のように、群れて外敵は排除するだけの存在。しかもそれは、集まると強力な武器になるテクノロジーの塊でもある、と。
ソラリスの〜』ではホラーのような気味の悪さがあったが、こちらではパニック映画のようなエネルギーの応酬が猛威をふるう。人間が理解出来る可能性を一切感じさせない『黒雲』は、『知性を持つ大洋』に勝る印象。それに疲弊していく宇宙船乗組員たちの描かれ方も、またじわじわ共感させられる。
この作品の、人間に対する容赦ない感じは、ツボにハマるなあ。どうしようもないものに対して、どうしようもないと判断せざるを得ない結末。勿論これは作品に描かれた範囲の結末であって、もしかしたらどうにかなる日が来るのかも知れないけれど。