テッド・チャン『あなたの人生の物語』

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

着眼点には敬服しきってしまう。ただし、そういう新たな物の見方に興味のない人々には、ちっとも面白くないであろう短編集。
言葉や数学など記号的な世界から、認識を反転させて世界を見る試みとか。とかく「認識」というものを題材とする作品ばかり。アイディア勝負という感じの作風。ちょいと浮き世離れしている。
ただし文体は妙に堅く、盛り上がりがない。気がつくと既にオチが出ていて、しかしずるずると話は続いていたり、そこら辺が面白みに欠ける。SFの本質が好きな人向けかな。
最後の『顔の美醜について』は普通に面白い。そのまま恋愛資本主義な議論に持ってこれそうな話という意味でも。
全体を通しての本音感想は「・・・へえー、ふーん?」といったところ。分からないところは分からない。