ルーディ・ラッカー『ソフトウェア』

ソフトウェア (ハヤカワ文庫SF)

ソフトウェア (ハヤカワ文庫SF)

ああ、サイバーパンクの面白味ってこういう事か。なるほどなるほど。
大雑把な見せ方でごろごろ展開転がして、すとんと肩透かしなオチをつける、大御所や権威がこだわりそうなところにはあかんべーカマして、カルいノリで毒を吐く。
巧いなあ。
ギブスンの『ニューロマンサー』はひたすら言葉で映像イメージを喚起させようという表現で分かりにくかったけれど、こちらは言葉自体がテンポを生んでて面白い。「ラップ」という単語が登場人物の一人から出てきたりする。なるほど、そこで出てきた台詞以外も、やたら韻を踏んでたり、妙に言葉の歯切れ良さを意識していたり、確かにラップ的な文章。
それに仰々しい展開がなんとまあ意外にも、という感じがなかなかツボ。
絶版なのが惜しい。
 
しかしこんな言葉遣いの文章が90年以前に出回ってたんだからなあ・・・。
舞城王太郎清涼院流水ばかり褒めてる場合じゃなかですよ。
翻訳家っちゅうのはセンスと知識の要る商売でんなあ。