クリストファー・プリースト『奇術師』

約600ページの翻訳モノを、たった2日で読み終えるなんて、我ながら珍しい。とどのつまり、面白かったと。ええ、とても。
19世紀末に『瞬間移動』を得意技とした2人の奇術師、彼らの確執が20世紀末の子孫にまで影響を及ぼし……。新聞記者の男性が最初の章で主役となり、そして彼の先祖が残したとされる手記が第二章を構成し、第三章では対峙した側の子孫である女性が語り部となり、彼女の先祖が残した日記が第四章、そして第五章で……。一切を知らない新聞記者、「惑わす事」に全てを注いだ男の残した記述、過去を知りそれに縛られた女性、そして几帳面な彼女の先祖が残した全容、そして話は新聞記者に戻り……。
徐々に真相が、伏線が明らかに、もしくは覆されて、本当の事が分かっていくような、話の組み立て方が見事。その緻密さが、何よりの面白さかもしれない。