田中哲弥『やみなべの陰謀』

やみなべの陰謀 (ハヤカワ文庫JA)

やみなべの陰謀 (ハヤカワ文庫JA)

いやあ、軽いんだか重いんだかよく分からないノリだ。とんでもなくややこしい目に遭ってるのに、意外と登場人物たちが落ち着いてるというか、むしろ達観しているというか。
ユルめのドタバタアクション物に、さぶイボ出そうなくらいの純愛物、伝記風悲恋物に、虚しさ漂うくせに節々コミカルな近未来独裁社会物、で最後に前4編の間を埋める時間旅行物、とそれぞれ妙に味がある。なんだか妙にちゃんとSFらしいノリが漂ってる。
妙。妙。妙ちきりん。
読者を読後に小声で「うーん」と唸らせる、いいジュブナイル物になっているようないないようないるんだと思うんだけどまあそういう事でいいでしょ?
まったく、ひねくれてんだか素直なんだか分かりゃしないが、分からないっつう事は素直にひねくれてるんだな。きっと。文体の脱臼感が、とかく好み。