浅暮三文『実験小説 ぬ』

実験小説 ぬ (光文社文庫)

実験小説 ぬ (光文社文庫)

コンパクトながら中身の詰まった実験短編とナンセンスさ漂うショートショートが纏められた短編集。
短編では、記号や文字や図表を組み込んだり、二つの物語を平行させたり、ゲーム小説のように読順を指定したりと、ギミック満載。しかもその多くに、死の臭いや不条理さの漂う印象深い物語が連なる。
ショートショートでは短編ほどの纏まりはないものの、エロ・グロ・ナンセンスさが痛快。例えるなら、河原で拾ったエロ本や虫の死骸や、綺麗な石っころなんかがごろごろ入った子どものおもちゃ箱。
それにしても表題が秀逸。眺めているとゲシュタルト崩壊していく表紙の大きな「ぬ」が、作品ずばりの怪しさがあって吸い込まれる。
読後感は星新一ショートショート作品に似ている気がした。