飛浩隆『象られた力』

象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)

これは半端なく面白いです。特に表題作は凄い。読んでいる間に膨大なイメージが想像出来るんですよ。しかもとても幾何学的で幻想的な。模様や図形に魅入られた人々の、繊細さや欲深さや逸脱感や力強さが、登場人物たちの視点から強く伝わってきます。
「デュオ」も良いですね。これも最後まで話の本質を隠して展開していく感じで、その「存在に」対する主人公の恐怖感を体感させます。
「夜と泥の」は典型的にSFでありながら、こちらもちゃんと落としどころが読み手を仰天させる感じで。
「呪界のほとり」は他の作品に比べると量も内容もちょっと寂しいところです。SFファンタジーのある種王道的な流れも書ける、という印象に終わってしまう作品かな、と。
全般的に個性的な物書きだと思います。境界線上のセンスの持ち主ですね。
一般的なSFの視点から少しばかり離れている感じが面白いですよ。