カート・ヴォネガット・ジュニア『タイタンの妖女』

なんとも陰気な臭いのする小説だなあと、そう思いながら読む。
登場する誰も彼もが、どうしようもなく酷い目に遭う展開がぽろぽろと続いてく、そんな太陽系規模のお話。
なんとなくブラッドベリと似ているところがあるなあと、個人的に思う。ただブラッドベリと違って小奇麗にまとまってなくて、そしてもっとネクラな印象を受けた。
エピローグが無かったら、本当にこれはどうしようもない話だ、劇中に登場した人物どころか劇中世界そのものが狂言を演じさせられていたような話で、虚しさを感じてしまう。
かといってエピローグもハッピーエンドとは言いがたく、本当にエピローグとしてコンスタントの最後を記したという印象がある。
 
あと、夏に読む小説じゃないね。秋や冬に読んだ方が、火星や水星の風景表現やこの陰鬱さを感じる展開を、より楽しめるかもしれない。